とってもやさしいマーケティング講座その3
「中小企業に必要なマーケティングとは⦅食品編⦆
一問一答!」

とってもやさしいマーケティング講座その3 <br>「中小企業に必要なマーケティングとは⦅食品編⦆<br>一問一答!」

福島県よろず支援拠点チーフコーディネーターの木村です。今回は、小さな会社のための、とってもやさしいマーケティング講座その3です。以前わたしが受けた取材記事内容を中心にお伝えします。よろず支援拠点ではみなさんの会社に合わせたマーケティング支援を行っています。苦手意識をもたずに一緒にマーケティングに取り組み福島ブランド、自分ブランドを作っていきましょう。

――大手企業と中小企業では、
マーケティングの方法も異なりますか?――

全く違います。私は、すべての事業者がその企業なり、その人なりのマーケティング力を身につけることが非常に重要だと考えています。マーケティングはもともと大企業向けに出来ていることもあり、中小企業の方には拒否反応を示されることもあります。でも、大企業と同じことをしなくても良いのです。何百万円もかけてリサーチをしなくても、身近な人に食べてもらえば十分に食味のリサーチはできます。不要なことはやらず、自分達向けにダウンサイジングして、必要なことだけをすれば良いのです。

――中小企業に必要なマーケティングとは何でしょう?――

私は中小企業の商品開発は、絶対にプロダクトアウトを起点にすべきだと思っています。その土地や自社の資源・技術へのこだわりを持ち、それを生かした商品を作ることが重要です。マーケットイン発想から商品を作れるのは大企業だけです。ただ商品を販売する時には、マーケットインのフィルターをかけ、市場のニーズにマッチさせることが必要です。例えばどんなに美味しい商品でも今の時代にそれほど大容量のものは売れないし、添加物がたくさん入っているものも売れない。シーズ(素材、技術、地域文化、歴史など生産者が持っている特別な技術や材料等)にこだわったプロダクトアウトの商品が、マーケットのニーズに合うか、きちんとチェックしていくことが大事なのです。

――商品開発の後、
販路を開拓するために重要なことはありますか?――

商品開発と販路開拓を別々に考えてはダメです。商品、価格、売場、プロモーションなどすべてがバランス良く機能しないと売上げには繋がりません。商品を作ってから販路をどうしようと考えるのではなく、商品開発をする時から、誰に、いつ食べてほしい商品かを考えることが必要です。その人がどこに買いに行くかを考えれば自然に販路も見えてきます。
大企業では商品開発部、生産部、営業部など部署が異なるため連携に時間がかかったりしますが、中小企業では、裁量権のある人が本気になれば全てを一元的に見ることが出来ます。これは中小企業の強みだと思います。

――マーケティングが必要な理由は何でしょうか?――

例えば商談会などで、多くのバイヤーさんがアドバイスをくれると思います。アドバイスはもちろんたくさん聞いた方が良いですが、それぞれのバイヤーさんには自社の都合があり、すべてのアドバイスに応えるのは中小企業には不可能です。でも、きちんとマーケティングをして自分の軸を持つと、どのアドバイスを取り入れるか取捨選択が出来るようになります。中小企業が自分なりの考え方、売り方を持たずに、たくさんのアドバイスを聞いても混乱してしまうのではないかと思います。

――実際にどうすればマーケティングが可能なのでしょうか?――

よくブランディングなどと言いますよね? パッケージをキレイにデザインしてネーミングすればブランディングと思っている人も多いと思いますが、それは誤解です。商品は、生産者(メーカー)が作りますが、ブランドを作るのは消費者です。ブランドは一言で言ったら、「お客様に好きになってもらう」こと。恋愛と一緒で、好きになってもらうには、自分の魅力を相手に伝えなくてはいけません。好きになってもらって始めて、自分の顔と名前が相手にとってブランドになるのです。マーケティングは、「商品の魅力を」「食べてもらいたい人に」「伝える」ことです。この3つだけが出来れば良いのです。

――3つの中で重要なものは何ですか?――

一番大事なのは商品の魅力です。商談会で使われるFCPシート(注1)がありますよね?
FCPシートの「商品特徴欄」こそが、商品の魅力です。商談会に向けて義務的に書いて文章がおざなりになっているケースが見られますが、あそこに200文字で自分の商品の魅力を文章化してください。200文字はしゃべれば30秒です。ここに真剣に向き合うだけで、商品の魅力が格段に伝わります。
「誰に食べてもらうか」というのはターゲットです。よく「30~40代の健康に気を遣う富裕層の女性」などと書いてありますが、そうではなく「○○さんちの奥さん」というように具体的にターゲットを決めましょう。そうすると、「あの家は子供が大きいから夕飯は旦那さんと2人だけ、となると、ボリュームはこのくらいで味付けは・・・」と具体的に考えることができます。「多くの人」ではなく「この人」と明確にするのが大事です。

(注1)「FCP展示会・商談会シート」は、出展者の「伝えたい情報」と、バイヤーの「知りたい情報」を1枚にまとめることで、効率的に商談を進めることを可能にした統一シートで、商談会のための商品紹介シートのスタンダードとなっている。
  参照URL:農林水産省 FCP展示会・商談会シート
  http://www.maff.go.jp/j/shokusan/fcp/syoudan_sheet/

――プロモーションに関しては、どう考えれば良いですか?――

例えば食品の場合、自社商品を売り込みたいと考えすぎると、頭の中が自社商品のことばかりになってしまいます。でも実際の食卓にはご飯があって、主菜、副菜、汁物など色々なものが並びます。主菜も肉だったり、魚だったりします。その食卓のどこに、どんな位置づけで自分の商品を置いてもらうかを考えなくてはいけません。例えば丸々1匹の味付きサンマの真空パックだと、買いに来た人はどう使おうか悩むかもしれません。そこでお皿に載せた食卓の写真などで食べ方提案するだけで、「これは副菜に使えそう」などとイメージしやすくなるんです。
私が手掛けた事例でも、ブイヤベースが成功したことがあります。ブイヤベースを家で食べたことがあるのは100人に1人くらいです。でもスーパーで鮮魚のブイヤベースセットとブイヤベースの素、野菜などをボジョレーヌーボーに合わせ試食販売をしたら300セットを完売しました。今まで作ったことがない、食べたことがないような商品でも売り方はあるんです。このように商品開発からプロモーションまで、お客様に好きになってもらうための努力のすべてがマーケティングといえます。

――食品の風評被害について――

さまざまな風評被害によって販路を失ってしまったということは、それまで売っていたものが、他社や他の商品でも代替が利く商品だったということです。今までの販路流通で風評被害にあっている事業者は、頭を切り替えて新たなマーケティングを考えることが必要です。
あまりマクロで考える必要はないと思います。風評被害により市場が何百億円減少しても自社がプラスになればいい。自分を応援してくれる人に買ってもらえばいいと考えてください。それにはお客さんとの接点を絶えず考えることだと思います。
商談会で商談がまとまった段階で喜んではいけません。商品と消費者が出会うのはそこから先です。あなたの商品を好きになって買ってもらうことが一番肝心なのです。

前回のブログもあわせてご覧ください。
とってもやさしいマーケティング講座その1 「ブランドとマーケティングの関係」
↓↓↓
https://fukushima-yorozu.go.jp/blog/archives/136

とってもやさしいマーケティング講座その2「商品の魅力の発掘」
↓↓↓
https://fukushima-yorozu.go.jp/blog/archives/211


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