「戦争は女の顔をしていない」

「戦争は女の顔をしていない」

ブログを担当する菅原です。今回は「戦争は女の顔をしていない」という本を紹介します。

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この本はスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチによって書かれました。発行は1985年。
彼女は1948年、ソビエト社会主義共和国のウクライナに生まれ、第二次世界大戦後、両親とともにベラルーシに移住。大学卒業後、ジャーナリストとして活動しました。おもな著作に「ボタン穴から見た戦争」「チェルノブイリの祈り」などがあります。2015年にノーベル文学賞受賞しています。
本の内容は第二次世界大戦に従軍したソビエト社会主義共和国の女性の500を超える体験の聞き取りしたことを「女性の言葉として」作者がまとめたものです。
独ソ戦の体験談が中心となっています。

独ソ戦は第二次世界大戦中の1941年から1945年に戦われた。民間人を含む死者はソ連2,000万人から3,000万人、ドイツ600万人から1,000万人と人類史上最大の死者を出しました。1945年5月にドイツの無条件降伏により終結します。
同じ戦争で日本人死者は260万人から310万人とされており、独ソ戦との規模の違いに驚きます。

少し本書より抜粋いたします。

膝までとどく長いお下げ髪の18歳になる小柄な女性の話。彼女は狙撃兵として75名を殺害し11回表彰を受けたそうです。
初めて狙撃する場面。

「どうしても決心できない。私は気を取り直して引き金を引いた。(ドイツ将校である)彼は両手を振り上げて、倒れた。死んだかどうかわからない。そのあとは震えがずっと激しくなった。恐怖心にとらわれた。私は人間を殺したんだ。」(「戦争は女の顔をしていない」三浦みどり訳、株式会社岩波書店、カッコ内筆者)

中立地帯から負傷者を8時間引きずって助けた女性の話。
「『勇気を称える』メダルをもらったのが19歳。すっかり髪が白くなったのが19歳。最後の戦いで両肺を撃ち抜かれ、二つ目の弾丸が脊髄骨の間を貫通し、私の両足が麻痺して私は戦死したとみなされたのが19歳でした。」(「戦争は女の顔をしていない」三浦みどり訳、株式会社岩波書店)
とにかく若くして「髪がしろくなる」人が多い。戦争が人の体に短期間でそれほどの影響与えるものとは、私には想像できません。

本書ではごく普通の若い女性が戦争という異常な状態に置かれながらも、思い、考え、行動する話が延々と続きます。異常な状態に置かれても女性らしい思いやりなどが随所に見られることが、本書の心に響くところだと思います。

独ソ戦の激戦地であったウクライナは戦争終結46年後の1991年、ソ連崩壊により独立しました。

現在。
独ソ戦終結から80年経っていない今、同じ国であったロシアとウクライナが戦っています。

2022年10月27日6:50現在、ウクライナの首都キーウの天気は11℃で曇りの予想。最低気温は9℃。日の出は7:39。太陽はまだ出ていません。