制作目線のウェブアクセシビリティ

制作目線のウェブアクセシビリティ

みなさまこんにちは。 福島県よろず支援拠点の保科です。
広告やWEB、SNS活用に関するお悩みがあれば是非ご相談ください。

今回のブログテーマは「ウェブアクセシビリティ」を取り上げたいと思いますが、制作会社目線でお話しさせていただきます。
私たちWEB制作現場では「W3C」(ウェブ技術の標準化団体)のガイドライン、WEB標準に従いながらhtmlタグやCSS(スタイル)を書いてコンテンツの品質を高めています。
その「W3C」が2008年のWCAG2.0というガイドラインを発行し、それが2012年に国際標準化機構(ISO)に承認されました。日本でも2004年に独自の指針を示し、2010年にWCAG2.0にあわせて改訂。その後2016年に国際規格「ISO/IEC 40500:2012」と合わせた規格「JIS X 8341-3:2016」に改訂され現在に至ります。
[*W3Cの「WCAG 2.1」=国際標準化機構の「ISO/IEC 40500:2012」=日本産業規格の「JIS X 8341-3:2016」]

そもそもウェブアクセシビリティとは何?
ウェブサイトにおいて高齢者や障害を持つ方が誰でもウェブサイトで公開されている情報にアクセスして利用できることを指します。使い勝手が良く、簡単に情報に辿り着ける意味でユーザビリティに配慮していると言いますが、ウェブアクセシビリティでは「誰でも使える」よう配慮する必要がある。ということです。
米国ではアクセシビリティ訴訟が増えているようで、例えばドミノ・ピザのネット注文でトッピングのカスタマイズができなかったことで訴えられたり、歌手のビヨンセの公式サイトが全盲のファンから訴えられたりと小売りから飲食、旅行業、銀行、エンターテイメントといった、主にB2C領域で増えているようです。
[米国において訴訟が多い理由として、障がいを持つアメリカ人の自由と権利を守るための法律=ADA(Americans with Disabilities Act)があるため]

日本の場合だと認知度は年々上がっているとは思いますが、行政、自治体などの公共ウェブサイト以外は、まだほんの数パーセントしか浸透していないように思えます。(公共ウェブサイトでも配慮できているのが半分くらいかと…)
理由はおそらく制作するのに「お金が多くかかってしまう」からだと思います。

具体的にどんなことをするの?
さて、一般的にウェブアクセシビリティ向上を目指す際に「知覚可能」「操作可能」「理解可能」が重要なポイントになってきます。例えば、目が悪い人や高齢者のために文字の拡大表示機能または文字の読み上げ機能をつけたり、弱視者への視認性を高めるために色のコントラストをつけたり、制作側の立場からすると結構やることが多いです。

うちの制作スタッフにヒヤリングしてみたところ

・キーボード操作を考慮したときtabキーでリンク先を移動する際は見た目通りの順番でフォーカス移動していくようにするのが以外に時間がかかる。

・スクリーンリーダーで読み上げを実装する際に、htmlを最低限にするように心がける。PCとスマホで出し分けが必要なhtmlをそれぞれそのまま直書きすると二重で読み上げがされてしまう場合があるため、ユーザーの混乱を招く恐れがあるので基本的にhtmlはPCとスマホ版で共通利用したり、jsで出し分けを行うため時間がかかってしまう。

・読み上げソフトに適切な情報を伝えられるように、buttonやnav、見出しタグ等目的に合った適切なhtmlタグを書くために割と神経をつかう。タグだけではなく今モーダルが開かれているかどうかなどの視覚的な情報の判別も伝える必要があるため、aria属性情報の付与も必要で以外に気付きにくいところに時間がかかる。

・デザインの段階で文字拡大をするとレイアウトが崩れてしまうことを想定していないケースがあり、なるべく印象を損なわないような崩し方になるようにCSS調整するのが思いのほか大変。

・白背景を組んでから黒背景を組もうとすると、パーツによっては白では設定していなかったmarginやborderが必要だったり細かな設計の差異が出るなどhtmlをやり直すときもある。

一部抜粋させていただきましたが、なんか制作サイドの愚痴になってしまったような…(^^;
まとめると、健常者にはなかなかわからないようなキメ細やかな配慮が必要で、かつデザインを凝れば凝るほどアクセシビリティ対策に時間がかかり、時間がかかった分お金もかかる内容ということになります。

ただし「誰でも使える」「使い易い」コンテンツはより多くの人に利用してもらうことで、商品やサービス提供の企業様にとってユーザー数の増加につながります。
また、日本でも2021年に障害者差別解消法が改正され、事業者による障害のある人への「合理的配慮」の提供が義務化されることにより今後さらにウェブアクセシビリティの重要度が高くなることは間違いありません。

以上、あらゆる人が同じように情報を得られる姿勢を打ち出すことにより企業イメージや信頼性向上にもつながりますので、この機会にご検討されてみてはいかがでしょうか。ご相談あればお申し付けくださいませ。