この上ない美しさを感じたこと
今回のブログを担当する菅原です。創業、設備投資、補助金、金融機関借入等で「事業計画が必要になった」場合は私にお任せください。
今回は私が読んだ本の中でその著者が「この上ない美しさを感じたこと
についての文章と私の体験についてお話ししたいと思います。
まず一つ目はヴィクトール・E・フランクル「夜と霧」からです。
ヴィクトール・E・フランクル(1905-1997)はオーストリアの精神科医・脳外科医・心理学者です。アドラー、フロイトに師事しています。1942年から1945年にわたりナチス・ドイツによる強制収容所に収容された経験を基に「夜と霧」を著しました。
今回は本文中の「第二段階収容所生活」の「壕のなかの瞑想」からの文章を以下に取り上げます。
「被収容者の内面が深まると、たまに芸術や自然に接することが強烈な経験となった。この経験は、世界やしんそこ恐怖すべき状況を忘れさせてあまりあるほど圧倒的だった。
とうてい信じられない光景だろうが、わたしたちは、アウシュヴィッツからバイエルン地方にある収容所に向かう護送車の鉄格子の隙間から、頂が今まさに夕焼けの茜色に照り映えているザルツブルグの山並みを見上げて、顔を輝かせうっとりしていた。わたしたちは、現実には生に終止符を打たれた人間だったのに―あるいはだからこそ―何年ものあいだ目にできなかった美しい自然に魅了されたのだ。」
(ヴィクトール・E・フランクル.『夜と霧』.池田香代子(訳).株式会社みすず書房)
フランクルは「生に終止符を打たれた」絶望的な状況下においてでも、「美」に圧倒的に魅了される精神状態になりえることを言っています。
二つ目は神谷美恵子「本、そして人」からです。
神谷美恵子(1914-1979)は日本の精神科医・作家です。新渡戸稲造と親交があったとのことです。1934年に叔父と共に訪れたハンセン病療養施設「多摩全生園」でハンセン病患者の病状に衝撃を受けたことをきっかけに医師となり、1965年に岡山県のハンセン病施設「長嶋愛生園」の精神科医長に就任しています。また「マルクス・アウレーリウス『自省録』」の訳者でもあります。
ここでは、著者が小学生の年の頃にスイスで見た風景を記述している部分を紹介します。文章が澄んでいて説得力がすばらしいと私は感じました。
「空がだんだん紫がかり、次第に濃紫(こむらさき)、濃紺、灰色と変って行くまで、身じろぎもせずに立ちつくしていた。あれはどういうことだったのだろう。よくはわからないが、おそらく幼いころからあこがれてやまなかった平和と、その平和を生み出す美とをそこで体験したのではないかと思う。
審美的素質もないのに、ここで美などということばを使うのにためらいを感じる。しかし美というよりほかないものであった。人間の世界には見出しえない調和と美と平和とがこの大自然にはあるのだ、ということをたしかめ、それで安心して帰路につくのであったらしい。」
(神谷美恵子、「本、そして人」、株式会社みすず書房)
神谷美恵子は子供のころの「美というよりほかないもの」に遭遇したことについて書いています。
私が「美」を感じたものは、ここまで紹介したような自然の風景ではないですが、オルセー美術館にあるアンリ・ルソーの絵画「蛇使いの女」です。
私が20歳のときにオルセー美術館に行き、印象派を中心に観賞しようと思い館内を歩いていました。歩いている中でふと、この「蛇使いの女」が目に入りました。そのときの迫りくる美しさに足を止めて見続けたことを鮮明に覚えています。
後で調べたところ、実際の絵の大きさは169 × 190 cmとのこと。当時の私には実際のサイズよりも、もっと大きく感じました。不思議なものです。
私はアンリ・ルソーの絵画を知っていましたが、特に見たいと思っていた絵でもありませんでした。先入観を取り払って実物を見るべきなのかもしれませんね。
アンリ・ルソーについてはYouTubeチャンネル「山田五郎 オトナの教養講座」で楽しく解説されています。アンリ・ルソーの人間らしさも分かり、おすすめです。
https://www.youtube.com/watch?v=6p0kg-Ut8fU
人間は「美」としかいえないものを感じるようにできているものなのかもしれませんね。
蛇使いの女、アンリ・ルソー、169 × 190 cm、キャンバスに油彩 、1907、ウィキペディアより引用
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:HENRI_ROUSSEAU_-_La_Encantadora_de_Serpientes_(Museo_de_Orsay,_Par%C3%ADs,_1907._%C3%93leo_sobre_lienzo,_169_x_189.5_cm).jpg
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